【質問】谷崎先生に「妊娠中のワクチン接種」について聞きました(「広報いせ」令和8年4月1日号掲載)

皆さんが疑問に思っている健康などに関する素朴な質問に対し、市立伊勢総合病院の谷崎医師がお答えします。さまざまな症状の患者さんに対応する「総合診療科」の観点から、分かりやすく「広報いせ」などでお答えしていきますので、皆さんの日常生活にぜひお役立てください。
妊娠中は、特定の感染症にかかりやすかったり、かかると重症化したり、流産・早産のリスクが上がるものがあります。それだけでなく、妊娠中は使える薬の制限もあることから、予防できるものは予防しておくことが勧められます。今回は、その予防方法の一つであるワクチンの話です。
妊娠中のワクチンで赤ちゃんを守る
生まれたての赤ちゃんは獲得免疫という免疫機構が未熟です。また、ワクチンはそれぞれの安全性・有効性などによって接種スケジュールが決まっているため、出生直後からすべての感染症に対するワクチンを接種することはできません。
その解決策として、妊婦がワクチンを接種することで、妊婦の中で産生された抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、出生後早期の赤ちゃんを一定期間守る(重症化を予防する)ことが期待できます(これを、母子免疫、受動免疫といいます)。
もちろん、妊婦がワクチンを接種することで、自分自身を守る効果につながるものもあります。
推奨されるワクチンは?
例えば、インフルエンザワクチンは母子免疫による乳児早期の発症予防・重症化を減らすことだけでなく、妊婦自身の重症化予防効果も期待されます。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) のワクチンも妊婦の重症化予防に有効とされています。日本産婦人科学会・日本産婦人科感染症学会は、すべての妊婦に一律にCOVID-19ワクチンの接種を推奨していませんが、もともと持病があるなど、重症化リスクの高い妊婦には接種を推奨しています(1)(2))。
その他、RS ウイルスワクチンが、2026年4月から定期接種になります。RS ウイルスは2歳までにほぼ100% が感染し、その多くは軽症ですが、中には人工呼吸を要するほどの重症例もあります。沖縄県のデータで、RS ウイルスで入院した小児のうち60% が1歳未満であり、1歳未満を分母に見た場合、0~2カ月未満児が40%と最多でした(3)。これらの新生児・乳児たちに投与できる抗体製剤はありますが、接種できるRSウイルスのワクチンはありませんので、あらかじめ妊婦がRS ワクチンを接種することが推奨されています。最後に、百日咳も新生児・乳児にとっては重症化リスクの高い疾患ですので、妊娠中のワクチン接種が勧められています。
お近くに妊娠している人がいたら、ぜひこれらの情報を共有してあげてください。
参考
(1)日本小児科学会:妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン
(2)日本産婦人科感染症学会:妊娠に向けて知っておきたいワクチンのこと
(3)Trop Med Health 2025; 53: 160.
|
病原体名 |
ワクチン名 | 接種推奨時期 | 接種方法 | 接種目的 |
|---|---|---|---|---|
| 百日咳菌 | DTap(トリビックⓇ) | 妊娠28から36週 | 皮下注射 | 早期乳児の重症化予防 |
| RSウイルス | アブリズボⓇ筋注用 | 妊娠24から36週 | 筋肉内注射 | 早期乳児の重症化予防 |
| インフルエンザウイルス | インフルエンザHAワクチン | 妊娠全期間 | 皮下注射 |
母体重症化予防と早期乳児の重症化予防 |
| SARS-Cov-2 | 新型コロナワクチン | 妊娠全期間 | 筋肉内注射 | 母体重症化予防と早期乳児の重症化予防 |
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