第77回 災害に関連する感染症について<前編>(「広報いせ」令和8年9月1日号掲載)

皆さんが疑問に思っている健康などに関する素朴な質問に対し、市立伊勢総合病院の谷崎医師がお答えします。さまざまな症状の患者さんに対応する「総合診療科」の観点から、分かりやすく「広報いせ」などでお答えしていきますので、皆さんの日常生活にぜひお役立てください。
災害と感染症の関係
災害と感染症の関係には、新型コロナのように感染症そのものが災害になる場合と、災害の後に起こる二次的な感染症とがあります。二次的な感染症は、発症時期によって問題になる内容が変わり、初期には外傷関連の感染症が、避難生活が長引いてくると、かぜや胃腸炎などが中心となります。今回は前者のお話です
災害関連の感染症(1):創部感染症
災害発生~4日頃までの時期は、怪我や火傷の傷口から細菌が入って発症する創部感染症が多く、その予防には、傷口の十分な洗浄が重要です。創内に異物(土、砂など) が残っていると感染リスクが跳ね上がるので、ただ洗い流すだけではなく、それらを除去する必要があります。赤み・腫れ・痛みが強まったときは、感染症を起こしている可能性が高く、抗菌薬による治療が必要になります。
災害関連の感染症(2):破傷風
破傷風は、ほぼ世界中の土壌に存在し、傷口から侵入し、その毒素でさまざまな症状を起こします。破傷風は怪我の直後ではなく数日.数週間たってから起こり、東日本大震災に生じた破傷風患者の、怪我から発症までの日数の平均は12日間でした1)。なお、人から人へは感染しません。
破傷風は小さな傷口でも起こり、重症化すると気管切開や人工呼吸器が必要になることもあります。よって、発症してから治療するのではなく、予防が極めて重要です。幸い、破傷風にはワクチンがあり(破傷風トキソイド)、事前に3回接種しておくことで、約10年間の予防効果が得られます。接種歴のない成人なら、3~8週間間隔で2回接種し、その6ヵ月後に3回目を接種します。そして、最終接種から10年以上経つと破傷風予防に必要な抗体価が低下するため、10年ごとに1回の追加接種(ブースター接種と呼びます)が必要とされます。現在のお子さんが受けている5種混合ワクチン(それ以前は4種混合ワクチン)にも破傷風ワクチンが含まれており、乳幼児期にきちんと接種を受けていれば基礎免疫はできています。ただし、最終接種から年数が経つと抗体価は次第に低下していきます。
このワクチンが日本で定期接種化されたのは1968年からであり、それ以前に生まれた人はほぼこのワクチンを接種していません。災害時にいざワクチンを接種しようとしても3回は間に合いませんし、災害時には破傷風予防のニーズが増えるので流通の制限がかかる可能性もあります。よって、できれば事前に打っておきたいワクチンの一つと言えるでしょう。
この機会に、未接種の人は3回接種を、すでに3回接種している人は追加接種を検討してみてはいかがでしょうか。
文献
1) Crit Care 16 (Suppl 1), P62 (2012).
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