伊勢うどん

伊勢市の郷土食「伊勢うどん」

　伊勢地域の独特なうどんで、太くてやわらかい麵に、少量のたまり醤油をベースにしたタレがかかった食べ物です。具材は刻みネギ程度で、あまり載せません。伊勢市内で継承されてきた郷土食であり、その発祥は江戸時代にまでさかのぼります。伊勢参りにおける代表的な食べ物の1つとして、現在も多くの観光客に親しまれています。

伊勢うどんのルーツ

　伊勢市の農家では、江戸時代以前から稲の裏作として麦が育てられてきました。伝承によると、伊勢うどんの原型は、農民たちが麦を挽いてうどんを打ち、地味噌から取れた「たまり」をかけて食べたものであるといわれています。この様な地元の人々の素朴な食事が伊勢うどんのルーツといわれています。

「たまり醤油」をベースにしたタレも主役

　タレはたまり醤油と鰹ダシを使用して作られます。両者はともに江戸時代の伊勢で親しまれた調味料です。現在は、たまり醤油に様々なダシやみりんなどを混ぜ、店ごとに工夫されたタレが作られています。タレが絡みやすいことが伊勢うどんの麵の特徴であり、タレの味わいを楽しむことにも強い意味合いがあります。

伊勢うどんを生んだ歴史

　伊勢市は古くから信仰されてきた伊勢神宮が所在し、江戸時代に多くの参宮者が訪れました。中心となった鳥居前町の宇治と山田は都市として大きく発展を遂げました。このうどんは、うどん屋や茶店で提供されるようになり改良されてゆき、江戸時代中期には今日のような姿になったようです。江戸時代後期になると、各地に多くのうどん屋が存在し、参宮者をもてなしていました。幕末期には宇治橋のすぐ手前にさえうどん屋がありました。食べ応えがありつつ消化が良い伊勢うどんは、長旅で疲れた人々に喜ばれたようです。この土地ならではの特徴的なうどんは、その美味しさと珍しさで、伊勢参りの記念に食べられ、帰った時に「食べてきた」と語り草になりました。
　戦後、麺の原料となる小麦は外国産に変わりましたが、近年、三重県生まれの品種「あやひかり」を使うことが試みられ、伊勢うどんに適した小麦として製麺業者やうどん店で積極的に使用されるようになりました。これにより、戦後長らく外国産小麦に押されていた県内産小麦の生産量が増加するとともに、伊勢うどんの消費量も右肩上がりとなりました。
　さらに、平成25年（2013）の神宮式年遷宮を機に、伊勢市に関する情報がメディアに取り上げられるようになり、伊勢うどんの全国的な認知度も大きく上昇しました。製麺業者やうどん店は売り上げの増加を感じており、地元スーパーマーケットでも地域を代表する魅力ある商品として取り扱われています。

伊勢うどん魅力発信事業

　令和4年度に文化庁の「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業に採択され、「伊勢うどん魅力発信事業」を実施しました。

　この事業では「伊勢うどん」の調査研究事業を行い、食文化ストーリーと調査報告書を作成しました。また、「伊勢うどん」の魅力に迫る講演会・シンポジウムを開催しました。これらの成果は文化庁ホームページに掲載されています。

 

《注釈》

• 「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業とは、国が特色ある食文化の継承・振興に取り組むモデル地域等に対し、その文化的価値を伝える事業を支援するものです。
• 食文化ストーリーとは、食文化の文化的背景をわかりやすく伝える概要的なものです。

• 【伊勢市　伊勢うどん魅力発信事業】（文化庁ホームページ）（外部リンク）

伊勢うどんに関するアンケート調査結果

　令和4年度に「伊勢うどん」の調査研究事業で実施したアンケート調査の結果を紹介します。