賃貸アパート退去時の原状回復

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ページ番号1005537  更新日 令和7年12月11日

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アパート等の賃貸借契約では、様々なトラブルが生じることがあります。
退去時の原状回復の負担区分の考え方について、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。
貸主(家主や管理会社)からの請求に「疑問がある場合」は、このガイドラインを参考にしましょう。

図:原状回復ガイドラインの例

原状回復ガイドラインの例

原状回復の基本的考え方

  • 入居者の「故意・過失」や「通常の使用を超える使用」による建物の損耗は、入居者が修繕する責任を負う
  • 「経年劣化」や「通常の使用に伴う損耗」については、賃料に含まれているので、原則として賃借人の負担とはならない
  • 次の入居者を確保するための化粧直し、グレードアップの要素があるものは大家(貸主)負担

ただし、

  • 賃貸契約の特約は、客観的・合理的理由が存在し、契約前に入居者に説明の上契約されていた場合有効
  • 経過年数を超えた設備(クロスの場合、6年で残存価値1円)であっても、例えば入居者がクロスに故意に落書きを行った場合、落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがある
損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表<例>
  入居者(賃借人)負担 大家(賃貸人)負担
床(畳、フローリング、カーペットなど) 引越作業で生じたひっかきキズ 畳の裏返し、表替え(特に破損等していないが、次の入居者確保のために行うもの

タバコ等のヤニ・臭い

結露を放置したことにより拡大したカビ・シミ

クーラー(賃借人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食

落書き

テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)

エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡

クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボ ードの張替えは不要な程度のもの)

壁に貼ったポスターや絵画の跡

玄関の鍵 鍵の紛失、破損による取替え 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、スス 清掃・手入れを怠った結果の汚損  
建具(襖、柱など) 飼育ペットによる柱等のキズ・臭い  
エアコンの内部洗浄   喫煙等による臭い等が付着していない限り大家負担
冷蔵庫下のサビ跡 サビを放置し、床に汚損等の損害を与えることは、賃借人の善管注意義務違反に該当  
風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等 清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当  

特約に記載がない場合、専門業者による全体のハウスクリーニング費用は大家負担(入居者が「通常の清掃」を実施していない場合は入居者負担)

経過年数(入居年数)を考慮しないもの

  • フローリング(全体を張り替える場合を除く)
  • 襖紙や障子紙、畳表
    (張替え等の費用について毀損等を発生させた賃借人の負担)

施工単位

原状回復は、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限度を施工単位とする。

  • クロス張替えの場合、最低㎡単位(経過年数を考慮)
    • 毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた賃借人の負担とすることは妥当
    • 喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることは妥当
  • 畳は原則1枚単位
  • カーペット、クッションフロアは、毀損箇所が複数の場合は1部屋単位(経過年数を考慮)
  • フローリングは原則㎡単位。毀損箇所が複数の場合は1部屋単位

入居するときの注意点

  1. 契約には 「一定範囲の修繕(小修繕)は入居者(借主)負担とする」といった修繕特約がある場合があります。
  2. 入居者(借主)に不利な特約も法律の規定に反しない限り有効なので、特約について確認しましょう。
  3. 部屋の状態(汚損)などは、入居前に、大家(家主や管理会社)の立ち合いの上、確認しましょう。

2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わりました。

改正民法は2020年4月1日以降の契約・合意更新した契約に適用されます。

原状回復の3つのルール

  1. 賃借人(入居者)は賃貸借終了時、賃借中の損傷について原状回復義務を負うこと
  2. 通常損耗、経年変化については原状回復義務を負わないこと
  3. 賃借人(入居者)に帰責事由(故意または過失)がない損傷については、原状回復義務を負わないこと

「敷金の返還義務」が、民法改正により明文化されました。

改正民法の対象となるのは、2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約です。旧民法での賃貸借契約でも、施行後に賃借人と賃貸人が合意して更新した賃貸契約(合意更新)は改正民法が適用されますが、合意更新ではなく、自動的に更新された賃貸借契約(法定更新)は対象外と考えられます。

一般的な契約更新は「合意更新」です

「本契約の有効期間が満了する場合、期間満了の6か月前までに当事者のいずれからか相手方に対して解約申し入れがない場合、本契約は従前と同一の条件で2年間更新されるものとする。」などの自動更新条項がある契約は、合意更新です。

合意更新できなかった場合に法定更新となり、法定更新以降は契約期間のない賃貸契約となり、更新料を支払う必要もなくなります。

「原状回復特約」の効力

契約書に「退去時にクリーニング代30000円を請求する」など、賃借人に不利となる原状回復義務を特約として定めることは可能ですが、ガイドラインでは、「賃借人に特別の負担を課す特約」は、

  1. その必要性と合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約の内容を認識していること
  3. 賃借人が義務負担の意思表示をしていること

の3つの要件を満たしていなければ、効力を争われることに注意すべきとしています。

必要性と合理的理由が希薄と思われる原状回復特約は、無効となる可能性があります。

敷金の定義

賃借人(入居者)の賃貸人(大家等)に対する債務(家賃等)を担保する目的で、賃借人(入居者)が賃貸人(大家)に支払う金銭。「敷金」「保証金」「権利金」等のいかなる名目によるかを問わない。

敷金の返還義務

賃貸人(大家等)が敷金等を受け取っている場合、次に掲げるときは、賃借人(入居者)に対し、債務の額(原状回復費用や家賃の未払い分など)を控除した残額を返還しなければならない(改正民法622条の2)。

  • 賃貸借契約が終了し、賃貸物の返還を受けたとき
  • 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき

賃借人(入居者)から、債務を敷金から充当するように請求することはできません。


原状回復のトラブルが発生した場合

賃貸借契約書の特約を確認したうえで、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にし、賃貸人(管理会社・大家など)と話し合うことになります。

話し合いで解決できないときは、民事調停や少額訴訟等を利用することも考えられます。


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