【質問】若年層における新型コロナワクチン接種で気をつけることはありますか?(「広報いせ」令和3年11月15日号掲載)
皆さんが疑問に思っている健康などに関する素朴な質問に対し、市立伊勢総合病院の谷崎医師がお答えします。さまざまな症状の患者さんに対応する「総合診療科」の観点から、分かりやすく「広報いせ」などでお答えしていきますので、皆さんの日常生活にぜひお役立てください。
【回答】急性心筋炎や心膜炎が起こりえますが、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)に感染した場合よりもずっと低い確率で、かつ軽症です。
いくつかある新型コロナワクチンの中でも、現在市内で主に接種されている新型コロナワクチン(mRNAワクチン)には急性心筋炎・心膜炎の副反応が報告されています。発症すると息切れや胸痛、不整脈などを起こし、突然死の原因になるとも言われています。この情報だけを聞くと非常に恐ろしい気持ちになりますが、でもご安心ください。新型コロナワクチンで急性心筋炎が起こる頻度は極めて低く、万一発症したとしてもほぼ軽症で死亡例も報告されていません。このことは、海外のデータでも同様です。
一方で、実際に新型コロナに感染して、かつ心筋炎を発症した場合には死に至る可能性があります。そしてその発生頻度も、新型コロナワクチンによって起こる心筋炎と比べると桁違いに高いのです。新型コロナに感染して心筋炎を発症した人のうち、事前にワクチンを接種していた人とワクチンを接種していなかった人とを比較すると、ワクチンを接種していた人の方が心筋炎のリスクがずっと低かったとの報告もあり、このことからもワクチン接種のメリットが見て取れます。
新型コロナワクチンによる急性心筋炎 | 新型コロナ感染による急性心筋炎 | |
---|---|---|
頻度 |
ファイザー社製:100万回接種中0.6件 モデルナ社製:100万回接種中0.8件 |
感染100万人あたり約1,600人 |
性別 |
男性に多い |
|
年齢 |
10~30代 |
さまざま |
重症度 |
全員軽症(死亡例なし) |
死亡例あり |
以上のことより、新型コロナワクチン接種後に急性心筋炎・心膜炎が起こる可能性はあるものの非常に稀まれであり、実際に感染した時の被害を考慮すると、接種のメリットがデメリットを大きく上回ると言えます。
なお、万一ワクチン接種後に心筋炎を起こした状態で激しい運動を行うと心筋炎の症状が悪化する可能性があるため、このリスクを確実に回避したい場合には、接種後1週間程度はなるべく運動を避ける方が良いでしょう(特に、思春期および若年の男性)。非常に稀な副反応でほぼ軽症であるため大きな問題になる可能性は低いですが、大事なスポーツの大会や合宿などが迫っている場合は、可能であれば接種時期をずらすなどの工夫を検討しても良いかもしれません。
健康に関する素朴な質問を募集中!
質問の応募方法
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