【質問】新型コロナワクチンの3回目接種について、ワクチンの種類や交互接種によって効果や副反応に違いはありますか？（「広報いせ」令和4年4月1日号掲載）

皆さんが疑問に思っている健康などに関する素朴な質問に対し、市立伊勢総合病院の谷崎医師がお答えします。さまざまな症状の患者さんに対応する「総合診療科」の観点から、分かりやすく「広報いせ」などでお答えしていきますので、皆さんの日常生活にぜひお役立てください。

【回答】ほとんど違いはありません。3回目もファイザーにした場合よりも、3回目をモデルナにした場合の方が抗体価が上がりやすい一方、副反応も多く報告されたというデータがあります。（1・2回目をファイザーで接種した人が対象です。）

3回目接種の経緯

新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株に対して2回のワクチン接種では予防効果に乏しいことが分かり、全国的に3回目接種が進んでいます。伊勢市ではファイザー社のワクチン（以下、ファイザー）で1・2回目接種を開始した人が多いと思いますが、その後世界中でさまざまな研究などが進められ、全てファイザーで接種するのではなく、3回目だけモデルナ社のワクチン（以下、モデルナ）で接種するという方法も認められるようになりました。

3回目接種の効果と副反応

皆さんの中には、3回目だけ違うワクチンを打って効果は大丈夫なのか？といった不安や、ファイザーの2回目の副反応がキツかったから、3回目をモデルナにすることで軽く済むといいな、といった期待を感じている人もいるかと思います。
まずは効果について、3回目接種後の発症予防効果に関しては、ファイザーで約60%、モデルナで約70%とされており、モデルナの方が若干高く見えますが、個人レベルで実感できる違いではないと考えられます。また、3回目をモデルナにした方が抗体価は高くなりますが、「抗体価の高さ＝感染阻止能力」とは限らないので、これもあまり気にする必要はありません。幸い、いずれも重症化予防効果は長期間保たれており、3回目接種者は未接種者と比べて入院するリスクが約96%も減少するといわれています。
副反応については、米国のデータでは1回目→2回目→3回目をファイザー→ファイザー→モデルナで接種した人は、ファイザー→ファイザー→ファイザーで接種した人よりも、接種部位の痛みなどの局所症状および発熱・倦怠感などの全身症状の頻度が10%程度高かったと報告されています。ただし、ファイザーとモデルナの直接比較ではないことと、やはり個人レベルで実感できる差ではないと考えられるので、そこまで気にする差ではないと考えられます。

オミクロン株の特徴

オミクロン株は確かにデルタ株と比べて弱毒化しましたが、感染力はデルタ株以上であり、オミクロン株による重症者数はデルタ株による数を上回っています。「重症者数＝感染者数×重症化率」なので、せっかく重症化率が下がっても感染者数が増えてしまえば、結果的に重症者数は増加します。重症者数が増えれば、本来入院するはずだった新型コロナウイルス感染症以外の病気やケガの患者さんが行き場をなくしてしまいます。
私も含め、もういい加減皆さんも新型コロナウイルスにはうんざりしていると思いますが、自分のためにも他の誰かのためにも、感染症対策をしながら生活していきましょう。

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